カッツモデル(カッツ理論)とは
みなさんはカッツモデル(カッツ理論)をご存じでしょうか。
カッツモデルは、1955年にアメリカの心理学者ロバート・カッツ（Robert Katz）によって提唱された、組織における効果的な人材育成のための3つの基本スキルを示すモデルです。カッツモデルは、管理職のスキルセットや経験に基づいて、組織内での業務や役割を定義します。そのため、組織内の人材の配置や管理に役立ちます。
カッツモデルの特徴は、具体的な役割に関する指標が明確に設定されていることです。これにより、メンバーのスキルや実績を評価しやすくなり、組織全体の目標に合わせた配置や育成が可能となります。カッツモデルは、組織のマネジメントや人材育成において効果的に活用することができる手法です。
カッツモデル（以下、カッツの3スキル理論とも）は、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つのスキルをバランス良く磨くことが、組織において効果的な人材育成に繋がると提案しています。
3つの基本スキル
テクニカルスキル（専門技術）
特定の種類の仕事や活動に関する知識や習熟を指します。これには、専門分野における能力、分析能力、適切なツールやテクニックを使用する能力が含まれます。
適切なテクニカルスキルを持っているということは、その人が組織に特有の活動、組織の規律や標準的な運用方法、および組織の製品やサービスに関して有能で知識があることを意味します。
例えば、エンジニアであればプログラミングスキルやシステム設計能力、営業職であれば商品知識や営業戦術が該当します。
テクニカルスキルは下級および中級の管理職で最も重要である一方、上級管理レベルではそれほど重要ではありません。
ヒューマンスキル（対人スキル）
他人と効果的にコミュニケーションし、協力し合う能力です。これには、感情のコントロールや他者への共感、リーダーシップやチームビルディングなどが含まれます。
ヒューマンスキルを持つ人、特にリーダークラスの人材は、他人のモチベーションの源泉に対してより敏感で共感的となります。それゆえ、部下にとって信頼に足りる雰囲気を作り出し、組織の目標を達成するために何をすべきかを決定がスムーズになります。また、ヒューマンスキルが高いリーダーは、他の人のアイデアから良いテーマを取り入れて自分のアイデアを修正します。
ヒューマンスキルは、下級、中級、上級の 3 つの管理レベルすべてで重要です
コンセプチュアルスキル（概念スキル）
組織全体を俯瞰し、問題解決や意思決定を行う能力です。具体的には、ビジョン策定や戦略立案、変革管理などが該当します。
リーダーが組織の上位に上がるにつれて、リーダーに期待されるのは、戦略的な方向性を示し、ビジョンを作成し、組織の目標を献身的に追求するようメンバーを動機付けることです。これらは、リーダーがアイデアを徹底的に考えて取り組むことを可能にする概念的スキルです。より高いレベルの概念的スキルを持つリーダーは、組織を形成するアイデアと将来のビジョンをじっくり考えるのが得意です。
コンセプチュアルスキルは上級管理職にとって最も重要である一方、中級、下級の管理職にとっては重要視されません。
カッツモデルの重要性
カッツの3スキル理論は、個々の職務や役割に応じて、3つのスキルのバランスを見極め、適切に育成することが求められます。これにより、効果的な人材育成が実現し、組織全体のパフォーマンスが向上します。また、企業は変化する市場環境に対応し、競争力を維持するために、カッツモデルの活用が不可欠です。
カッツモデルの活用事例：アマゾン
アマゾンのような組織は、カッツの 3 つのスキルのアプローチを経営に適用することで成功しました。たとえば、CEO ジェフ・ベゾス率いるトップリーダーシップの下での Amazon の成功は、適切なツールやテクニックを使用する能力を通じてそれぞれのスキルを活用していることを示しています。
テクニカルスキルの活用例
顧客へ提供するサービスには常に新しいテクノロジーが利用されています。
新しいサービスの活用のためには常に新しいテクニカルスキルの向上が求められています。
今日、世界をリードするアマゾンのサービスには、このテクニカルスキルの活用が不可欠となります。
ヒューマンスキルの活用例
一つのサービスを提供して、そこで顧客との関係が終わることを是とせず、顧客との関係の始まりを機に長期間の関係性構築をアマゾンはどんなサービスでも得意としています。
アマゾンは会社全体で顧客のニーズを満たすよう努めており、顧客満足度の向上に必要な組織の運営ができるメンバーを組織の管理者として配置しています。
コンセプチュアルスキルの活用例
コンセプチュアルなスキルは、リーダーがアイデアやコンセプトを扱うのに役立ち、それによって組織の目標や戦略計画を策定することができます 。
このコンセプチュアルスキルは、組織の将来に向けた戦略計画を立てる責任を負うトップマネジメントに強く求められます。
このスキルにより、アマゾンのCEOであるジェフベゾス は、Amazon ウェブ サービスにつながる取り組みなど、会社に大きな変化をもたらすことができました。
ここで、ジェフベゾスが採用したコンセプトの一部をご紹介します。
- 変わらないものに戦略を基礎付ける
- 顧客に対するこだわり
- 誤解されることを厭わない
- 料金が安い会社である
- 顧客のニーズを考慮する
- 逆算して取り組む
などが、Forbesで紹介をされています。
※出典：Forbes[Jeff Bezos Reveals His No. 1 Leadership Secret]
スキルミックスの例
同社は、あらゆるレベルの管理職においてスキルミックスを発揮することができ、それが組織の成功につながりました。たとえば、CEO は先ほどのような高度なコンセプチュアルスキルを備えており、そのおかげですべての業務において目に見えるコンセプトを策定することができました。また、CEO はチームが少人数であることを許可する「ピザ 2 枚ルール」を策定しました。このルールにより、組織は市場毎に合わせたチーム編成が容易になりました。
また、中間管理者や統括責任者は高い技術力を持っており、実際の製品を期待通りに仕上げることができます。中間管理者および監督管理者が所有するテクニカルスキルには、ソフトウェア エンジニアリング、プロジェクト管理、オブジェクト指向分析、設計などが含まれます。
アマゾンにおける のすべてのレベルの管理者は優れた人間的スキルを備えているため、顧客とコミュニケーションをとることができます。このスキルは、顧客のニーズに応じた製品の生産を通じて顧客を満足させるのに役立ち、このため、同社は世界最大のインターネット小売業者とみなされています。
CEO、SVP、副社長で構成される上級管理職は、組織内の複数のビジネスを監督する責任を負います。これらのマネージャーは、カーツモデルのスキルミックスを採用しており、これにより、さまざまなビジネスにわたってスムーズなコラボレーションを構築することができます。
さまざまな管理レベル間のチームワークは、スキルの組み合わせによって開発された強力な機能の 1 つです。チームワークにより、社内では非常に迅速な意思決定が可能になりました。
カッツモデルの活用に向けて
カッツモデルを活用することで、企業は従業員一人ひとりのスキルを総合的に評価し、効果的な研修プログラムを提供することができます。これにより、人材のスキル向上が促進され、組織全体の生産性が向上します。
是非みなさんの企業においても、この様なスキルモデルの適用に取り組まれることをお薦めします。
