— まずは貴社の事業や今回の参加メンバーについて教えてください。
篠田様:弊社は、コールセンターやデジタルマーケティングなどのアウトソーシング事業を展開しているトランスコスモスのデータ分析業務に特化して生まれた会社です。
会社の主な事業はマーケティングリサーチ、AI活用を含めたデータ分析、システム開発の3本柱となっています。
今回研修に参加したのはその事業の中で分析プラットフォーム開発を担当しているDevOps推進部のマネジメントメンバーになります。この部隊のミッションは、3つあり、1つ目がデータサイエンティストやリサーチャーの分析ノウハウを組織の仕組みとして転換していくというものです。
2つ目がグローバル標準の開発スピードと品質を両立させる、3つ目が、お客様に言われた物だけを作るのではなく、お客様のインサイトを受けとめて企画・改善・実行していけるよう開発組織になる、というミッションを担っております。
そこで、私がCDO/CFOを務め、鈴木がAI開発・運用チームの責任者を務めております。
色々な変化が生じていたとしても、変化に対応し得る考え方や動き方を生み出すことができるようになるのではという期待がありました。
— 今回Management 3.0研修を受講するに至った背景を教えてください。
篠田様:発端としては、企業を取り巻く環境の変化と適応への必要性です。コロナ禍による不可逆な変化やデジタル技術の進展など私たちは実際に多くの変化を体験してきました。こうした変化に対応していくには、変化に対するスピードと複雑性への対応が重要であり、従来の考え方の延長線にはない、新しい前提にあわせて会社全体の方向性を再検討する必要がありました。
そこで、昨年、改めて会社としてのミッション・ビジョン・バリューを作り直しました。
共通コンセプトはスピードの重視でした。
セールスや分析業務、開発、皆の個々でのスピードを上げつつ、さらに相互に連携をして、結果としてお客様のニーズに応えるスピードを速くしていこうという話を全社でしていました。
一方、そのコンセプトに対して組織はどうあるべきかということを考えたときに、今の時代は正解が見えない、あるいは最初に考えていた形が時間と共に変わってくることもある、そうなると、最初に定めた正解に対して時間を掛けて取り組んでいくのではなく、色々な試行を素早く繰り返すことで、調整をしながらその時点の正解に迫っていくことが大事だと思うようになりました。
この考え方を進める際に、従前のような経営者がトップダウンで指揮していくスタイルでは限界を感じるようになり、時間と共に状況が刻一刻と変化していく・複雑化していく中ではメンバーそれぞれが現場感を持ち、インタラクティブに対応していく必要があり、そのために全員が主体的に学んで状況に適応していく組織であることが重要だと考えました。
そんな中、組織をより良いものにすべくマネジメントの本を手当たり次第読んでいて、たまたま見つけた書籍がManagement 3.0の考えや手法を日本語で紹介している『マネジメント3.0』と『マネージング・フォーハピネス』でした。
世の中には教育研修コンテンツが沢山ありますが、なんとなく共通していると感じるのは、正解そのものを教えようとする点やテクニカルな手法を教える内容になっているなという点です。例えば、ある状況においてはBを得るためにXをすべし、というような内容です。
これは、これまでのような、あるいは何かをなぞるような、言わば未来が予測しやすい状況においては有効かと思いますが、昨今のような変化が激しい状況においてはいざ実行しようという時には別な変化が起きていて、学びが活用できないことが殆だと思います。
一方でManagement 3.0はテクニカルな手法を学ぶのではなく、置かれているシチュエーションや目指す姿に対して、どのような考えや行動が良いか自体を考えるという、手法の根幹部分を学ぶことができると感じました。
そのため、色々な変化が生じていたとしても、変化に対応し得る考え方や動き方を生み出すことができるようになるのではという期待があり検討を進めることになりました。
そこから、書籍だけでは理解が難しい点もあり、専門家に教えてもらったが方が早いと思い、ヒロラボさんへ問い合わせたのですが、返信の早さと説明の分かりやすさ、そして無料での体験会を行ってもらえたことで、実際の研修前にイメージが掴めて期待が確信に変わり、安心して研修本番に臨みました。
意識が統一でき、アウトプットが揃うようになってきました。
— 研修の中で印象に残っている内容はありますか?
鈴木様:Management 3.0の考えで、[人ではなくシステムをマネジメントする]というのと、[Management 3.0はマインドセットであり、ゲーム、ツール、プラクティスを組み合わせて変化させ、あらゆるメンバーが組織をマネジメントできるようにする、ワークシステムを考える方法]という言葉が凄く印象に残っています。
正直、講義中に初めて聞いたときは意味が分からなかったです(笑)。
例えば、マネジメント、というと人を対象に行うものだと思っていました。
それが研修を通して色々な考え方やワークショップに触れることで大分理解ができました。
そして、先ほど篠田が言っていた[手法ではなく考え方を学ぶ]という点も、研修を進める中で腹落ちできました。
[人ではなくシステムをマネジメントする]点も理解ができました。
単純に[こういうシチュエーションの時にこうすれば良い]という手法を学ぶのではなく、考え方を皆で理解して、対応策を作っていくことになるので、例えばそれまでチームではやり方も考え方もバラバラなためにアウトプットもバラバラだったのが、文書の書き方や仕事の進め方、エビデンスの残し方など、そういった部分での意識が統一でき、アウトプットが揃うようになってきました。
篠田様:私が印象に残っているのは「組織は都市づくりのようなもの」という言葉で、マネジメントを全員で大小問わず分担をしていく考えですね。
これまでは複雑な状況の中、どうすればメンバーが動きやすくなるか、マネージャーの負担が軽くなるかという視点で考えていたのですが、「皆でマネジメントの考えを理解し、仕組みを作り、マネジメント活動をメンバーで分割していけばいい」という視点が、後から思えば至極当然ではあるものの、はっと重要さに気付かされましたね。
なので、メンバーに対して早速この話をし、[責任は役職としてのマネージャー層が担うけど、マネジメント活動や組織そのものを良くしていくことは皆で協力して分担していこう]というメッセージを伝えています。その結果、仕事の采配が非常にし易くなりました。この考えはかなり印象に残っています。
メンバーの自発性とモチベーションが向上。権限移譲も進み、仕事のスピードが加速。
— 研修実施後の取り組みや効果につきまして、教えてください。
篠田様:受講後、研修の受講メンバーを中心に各チームで積極的にManagement 3.0で学んだことの実践が進んでいます。例えばWorking Agreementの作成や、Moving Motivatersの実施などです。
各チームの中で会話をしながらWorking Agreementを作ったことで、それぞれのチームの共通言語や方向性が上手く摺り合わせられて、自然と浸透するようになりました。
また、Moving Motivatersを皆でやってみて、自身が何を重要視しているのかを可視化でき、意外な人が職人気質だったり、新奇なことに手を挙げたがるけど実は安定性を求める考えだったんだということが分かって面白かったです。そこから、各メンバーのタイプを意識して、新しい組み合わせでプロジェクトに臨んでもらうとかも考えていたりします。
他には、月次でメンバー全員が集まる機会があるので、そこで全員参加型のワークショップとしてランダムにチームを作り、Change Management Gameを定期的にやっています。これは特によくできているなぁと感じていて、面白いがゆえに時間があっという間に過ぎてしまいますね。時間管理で苦労しているんですが、みんなが熱中できているっていうのは重要なポイントであり、何回時間を延長したか分からないぐらい集中しています。このゲームを使って、課題に対し組織を越えたメンバー間でセルフマネジメントをしてもらったりしています。普段、見落としてしまうような視点での質問が多いので、これまでにない解決策も出やすく、そこで出た解決策をメンバー自身が組織の中で実行する、という動きも進めています。
鈴木様:Management 3.0の内容は分かりやすいのと実践し易いので、実施するメンバー間で仲良くなりやすいなと感じています。これは結構大事なことだと感じていて、オリエンテーションを兼ねながらしっかりビジネスに繋がっている内容というのはとくにオンラインでのコミュニケーションもある今の時代にとても有効だなと感じています。コロナの影響もあり、リモートワークをしているメンバーもいるのですが、オンラインだけだと中々プライベートな話をするきっかけが作りづらいのですが、Management 3.0の内容を実践する中で自然とお互いの深掘りができ、これまで以上に互いの理解を進めることができ、盛り上がりが生まれ、組織にも少しずつ変化が起きてきていると感じています。
篠田様:確かにメンバー個人にも変化が起きています。例えば、これまでセミナーに登壇したことがない社員が大きなイベントに登壇してプレゼンをしたり、プログラマー経験の浅い社員が開発の上流工程の設計にチャレンジしたりと、自発性を発揮する象徴的なできごとがありました。
他には、定期的にサンプリングで実施している組織のモチベーションスコアが上昇する効果もありました。部門全体のスコアがこれまでの78ptから84ptへと向上しました。
要因として、周りからのサポートが増えたとか、仕事を任せてもらえるようになったという点がありました。もちろん他の制度との組み合わせで今回のスコアが出ているとは思いますが、組織の中のコミュニケーションや仕事の仕方が以前よりも少しずつクリアになったことで、互いの信頼関係がより強固になってきたのかなと実感しています。
鈴木様:あとはOKRを運用しているのですが、ミッションが明確になったことに加えて、今回の研修後にメンバーがさらに自発的に動いてくれるようになりました。また、私からの権限移譲が進んだことがきっかけで、それが良い方向に作用して皆の仕事のスピードも速くなりました。
もし、研修を受けていなかったら、きっと全部私が意思決定をしていて、恐らくですが目標は達成できたかもしれないけれども、過程として自発的な組織にはなっておらず、進み方として皆で苦労してしまったかもなと思います。
あとは効果というより感想になるのですが、スクラムマスターにとってもManagement 3.0は非常に良いものだと思っています。スクラムガイドで自己管理型の話が出てきてて、スクラムチームはメンバー自身の意思決定で進めていく形ですが、じゃあ実際、どうやったらメンバーがそのような自己管理型になれるかまでは書いていないんですよね。あくまで方法の一つですが、メンバーが自発的になれるManagement 3.0はスクラムマスターにとても有用であると思いました。
自走しやすい土壌を継続的に作っていこうと考えており、その下支えがManagement 3.0であると考えています。
— 今後の組織方針や目標があれば、教えてください。
篠田様:スピードと複雑性への対処として、平時はフラットにティール型組織で活動し、有事の際は階層で束ねる組織、という姿を目指しています。
我々はDevOpsという役割なので、開発スピードと品質を高めることが第一です。そしてそのために開発以外のことも含めて自走型組織を実現していこうとメンバーに説明しています。
自走型組織の実現に向けて、目指すべきGOALとしてティール型組織という表現を使い、そのためのガイドラインとしてManagement3.0を位置付けています。Management 3.0もティールと相反する考え方ではなく、同じ方向性の考え方なため、特段メンバーの理解に支障は出ておりません。
組織のミッション・ビジョン・バリューや戦略、OKRがあってメンバーが自走し易い土壌の中、メンバーが自己組織化の上で素早く動いて問題解決をしていくのが平時です。リーダーはそれを支援する立場です。それが基本であり、本質的には役職者というのは必要無いのですが、万が一の有事の際は階層型で問題解決をする、というのを考えています。
とはいえ、「言うは易く行うは難し」が組織変革です。自走のために必要な考え、動きに向けて、メンバーが仕組みをマネジメントし易いよう、Management 3.0のエッセンスを今後もどんどん取り入れて行く形を考えています。
私は受講時よりも、昨日の方が価値を感じています。
— Management 3.0の研修は、どのような方にお薦めできますか?
篠田様:複雑な市場や激しい変化に直面し、なかなか組織を活性化させられていないような悩みをもったマネジメントの方には是非一度受講して欲しいと思います。
逆に、冒頭申し上げたように、正解がすぐに変わりやすい時代に正解を導く特効薬はないと思っているので、土台作りではなくすぐに正解に繋がる手法を求めていたり、あるいは漠然と「研修を受けたら何かが良くなる」と考える方には、お薦めしません。
ビジネスが複雑化している中、どんな組織も色々な施策を打っていると思いますが、一人だけの視点ですと手詰まりになり易いですし、旧来のような階層型で役職者やリーダー層だけで何かを考えるとなっても、元々の視点が近いので、説明はし易い一方、出てくる意見も少し似てしまうことがあります。
一方で他のメンバーを巻き込もうと考えたときには、視点が異なる分、説明に苦労してしまうことも正直あると思います。
リーダーと同じ事をメンバーに伝えても感じ方、捉え方が異なり、異なった理解のままだと走り出すことも難しくなる。理解が揃った上で広い動きや柔軟な動きを取れることが組織の力だと思うので、そこに対してもManagement 3.0は効果があると思います。
実際、我々もそうですが、研修を受講してから組織全体の考え方や動きの変化は、たった数ヶ月でも感じる事があり、その変化は非常に良いものだと思っております。
昨日も受講内容を見直していましたが、私は受講時よりも、昨日の方が価値を感じています。組織に持ち帰って実施することで、受講直後より色々なことが分かり始めてることや、組織に良い変化が出ていることがその理由です。
単純な手法だけですと、すぐに使えなくなることも多いですが、Management 3.0は基礎となる考え方そのものを身につける事ができるので、組織の中で反復して実施することができ、それが納得感のある組織の変化に繋がっていると思っています。
なので、組織のこれからを担うリーダー層や経営層の方々にManagement 3.0の受講をお薦めします。